本書は日本のコピーライティング業界の現場の空気を感じることが出来る数少ない教科書だ
昨年10月ぐらいからセールスコピーライティングの勉強をしている私ですが、書店で平積みされていた「とある書籍」が目に入り、手にとって見たわけですが、これがなかなかの良書だったので紹介と簡単なレビューをします。
その書籍とは小霜和也さんの著書「ここらで広告コピーの本当の話をします。」というもので、帯には「コピー1本で100万円請求するための教科書。」と書かれています(つまり、小霜さんはコピー1本で100万円以上請求しているということになるわけですね。羨ましい。。。)。
小霜さんはコピーライター兼クリエイティブ・ディレクターということなのですが業界では有名な方。本書に書かれている実績の一つを紹介します。
この記事の目次
PS Vita が売れ始めるきっかけとなったコピー
2013年中頃にTVCMなどで宣伝されたPSVitaの「共闘先生」というCMも小霜さんが手がけたもの。当時PSVitaの売り上げがかなり不調だったのですが、このCMを皮切りに大きく売り上げを伸ばし始めました。
当時から「狩ゲー」でお馴染みモンハン(モンスターハンター)は人気でPSPの販売数を大きく伸ばす要因になっていて、皮肉なことにそれがPS Vitaが低迷する理由でもあったんです(顧客はPSPで満足)。モンハンが売れた理由は「狩り」では無く「共闘」なんですよね。だから「共闘」という言葉を前面に押したコピーを作ったわけです。コピーは「分かりやすい」ことが最重要なので。そして見事に結果を出したわけです。
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本書には他にも小霜さんが関わった実例(サントリー 天然水サーバーなど)を元にコピーの考え方をレクチャーしていたり、逆に関わってはないけど小霜さんが評価する広告(ACEのスーツケースなど)を例に挙げていたりと、とにかく具体的で参考にしやすい内容になっています。
また、本書に書かれている「水道水を売る方法」はものすごく参考になったので取り上げてみます。
もし、あなたなら水道水を500mlペットボトルに詰めていくらで売ることが出来ますか?
何の変哲も無いただの水。蛇口をひねれば出てくるただの水。これが店頭で販売されていても買おうと思う人はいないはずです。
一時期、各地の水道水が美味しくなったと話題になってペットボトル詰めされて販売されたことがありましたがそれは除きましょう。水道水の品質が向上したことのアピールであり、ペットボトルに入った水道水を売ることが目的ではないからです。また、「砂漠で喉を乾かした人なら高額で買うはず」というのも除外します。輸送費が多大にかかるのでビジネスとして成り立たないからです。
では、どうやって水道水を売るのか?どうやってビジネスとして成立させるのか?
ターゲットの選定は最重要
まず、「どんな(状況の)人がペットボトル入りのただの水を必要とするのか」を考える必要があります(コピーを書く上でターゲットを選定することは最も重要なことです)。
本書に書かれているものを例に挙げると、震災などの緊急時や熱中症が起こる夏場の屋外などです。こういった状況ではペットボトル入りの飲料水が必須です。断水されたら蛇口を捻っても水は出ないし、外出時はいつでも水が飲める環境があるとは限らないからです。
ただの水を売るターゲットは分かりました。しかし、これだけでは売れないんです。いくら必要な物といっても「水道水」や単に「水」と書かれているだけでは購買意欲は沸きません。1本10円でも買う人は稀でしょう。しかし、ある工夫をすることで100円を払ってでも買う人が出てきます。
売る為には商品を買うことで得られるメリットを明示する必要がある
売るためにはベネフィット(商品から得られる本当の価値)を訴求する必要があるんです。つまり、「震災時、あなたの命を救います」「子供は大人よりも熱中症のリスクが高い!水分補給を。」というような購入の必要性を訴えるコピーが必要なんです(ちなみに熱中症対策にはただの水よりも糖分・塩分を添加した経口補水液を推奨)。
このように、ただの水に意味を持たせることにより、採水に手間のかかるミネラルウォーターでなくても商品として売ることが可能になるわけです。
本書はコピーライターだけではなく多くの社会人にも役立つ
4章ではコピーを書く「姿勢」について書かれているのですが、この内容は多くの社会人に必要な姿勢です。
特に「クリエイティブはワンチャンス!」と「足掻く。それが唯一の剣。」という項目についてはハッとさせられました。簡単に紹介します。
クリエイティブはワンチャンス!
広告業界は結果を出せなければ次からは依頼されることは無いと小霜さんは言っているのですが、多かれ少なかれ多くの企業でも同じことだと思うし、そうあるべきだと思うんですよね。
小霜さんが言うようにプロは金銭を貰って仕事をしているわけだから、絶対に結果を出さなければならないのは当然のことであって、「新人だから大目に見てください」なんて話はクライアントには通用しない。いかなる理由があろうと自身がやったことでクライアントに不利益があってはならない。そう思います。
足掻く。それが唯一の剣。
必死な思いでがむしゃらに足掻き仕事をしている人は少ないと思います。多くの人は与えられたノルマをこなすだけ、自発的に行動する人であっても、自分を追い込むまでのことはしないという人がほとんどなはずです。
個人的にはある程度余力を残して、万が一のトラブルにも余裕を持って対応することが大切だと感じるんですが、ギリギリまで追い込まないと生み出せない物があるというのも分かるんですよね。
いずれにしろ、「まだまだ学ばなければならない事が山ほどある」と感じざるを得ない内容でした。
本書はコピーの考え方に特化した内容。セールスコピーを学ぶには他の書籍と併用が必須
本書はコピーの「考え方」や「姿勢」に特化した内容となっています。小霜さん自身、テレビなどで展開されるビジュアルを主体にした広告制作をやっている人なので本書の内容もその傾向が強いです。
文字がメインであるセールスコピーで言うならヘッドライン(大見出し・ページタイトル)の部分くらいにしか触れられていない。つまり本気でセールスコピーを学びたければ他の書籍を併用して学ぶ必要があります。
というわけでここでは私が実際に読んだセールスコピーに役立つ書籍をいくつか紹介します。
セールスコピーの全体像を手軽に把握したい人には
バズ部の『10倍売れるWebコピーライティング』がオススメです。セールスコピーの書籍というと翻訳書が多く、お世辞にも読みやすいとは言えないものも多いので純国産で読みやすい本書はそれだけで価値があります。
また、全144ページとコンパクトで図表も多く読み疲れない為サクっと読めてしまいます。また全体像を把握しやすく要点もまとまっているので復習用としても重宝しますよ。
ただボリュームが少ないのでセールスコピーを深く理解するには情報量不足かもしれません。また集客テクニックには一切触れられていないので、下記に挙げる『ウェブ・セールスコピーの法則』との併用をオススメします。
Webに特化したセールスコピーについての詳細と活用方法を知りたい人には
『ウェブ・セールスコピーの法則』は私がセールスコピーを本格的に学び始めるきっかけとなった書籍であり、最も成果に結びついた書籍でもあります。Webに特化したセールスコピーの基礎から、応用技術、さらには売る為の心理テクニックまでを網羅しています。レビューも書いているので参考にしてみてください。
そして本書ではコピーの書き方だけではなく、「どういった場面でセールスコピーを活用すれば良いのか」「どうやって集客するのか」ということまで解説しています。翻訳書なので多少読みにくい箇所はあるものの、そんなことは気にならないくらいとにかく至れり尽くせりな内容となっています。
消費者の感情を揺さぶり利益をもたらす心理テクニックを知りたい人には
『現代広告の心理技術101』がオススメです。コピーを書く全ての人やブロガーなど、ありとあらゆる人に薦めたい書籍です。
モノを売るためには顧客の心を掴み揺さぶる必要があります。しかし、多くの人はどういった言葉が心を揺さぶるのかを知らないのです。その「心を揺さぶる」方法について書かれたのが本書です。
本書には心理テクニックだけに特化した内容となっている為、中身が濃く実例も豊富です。しかもコピーによる心理テクニックだけではなく、デザインや色による心理テクニックも書かれています。
「コピーはある程度学んだけどいまいち結果が出せない」と悩んでいるなら必読です。あなたに欠けているものが見つかるはずですよ。
なお、以下のリンク経由で今なら90日間全額返金保証付なのでこの機会をお見逃しなく。
終わりに
色々と紹介しましたが本書「ここらで広告コピーの本当の話をします。」は為になるし、内容も濃い、それでいて読みやすいので文句なしにオススメの一冊です。是非手にとってみてくださいね。
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